
「ネイティブはよく使うのだけど、英語学習者はあまり使うことができていない語彙・フレーズ」
「市販の単語帳・熟語帳にはあまり載ってないのだけど、ネイティブは日常的に使っている英語表現」
これを知りたい英語学習者はとても多いのではないでしょうか?
私は、留学経験やこれまでの大学での授業経験などをいかして、Twitterで平日毎日「#一つ上を行くための英語表現」というタイトルで、「英語のネイティブがよく使うフレーズ」をつぶやいています。
本記事はその中から#001-030をまとめたものです。各フレーズの解説については、ツイートを加筆修正しています。
いつもTwitterで見られている方は復習のために、初めて見られる方は語彙力の強化に、ぜひ本記事をご利用ください。
✔︎ 本記事の内容:
「英語のネイティブがよく使うフレーズ」を30個まとめる
なお、本記事で使う表現についていくつか注記しておきます。
- sb:somebodyの省略表現です。「人」を意味します。
- sth:somethingの省略表現です。「物・事」を意味します。
- one’s:my, your, his, her, our, their, Peter’sなどの所有格の代替表現です。
- BrE:イギリス英語(British accent)の省略表現です。
- NAmE:北米英語(American accent)の省略表現です。
- BrEとNAmEで発音が変わらない場合は、両者を区別しないで発音記号を表記します(例えば、002のケース)。
✔︎ 本記事のフローチャート:
- #001-015
- #016-030
1. #001-015

001
stumble upon sb/sth:(人や物・事)に偶然出くわす 【BrE: ˈstʌmbl əˈpɒn】【NAmE: ˈstʌmbl əˈpɑːn】
I stumbled upon the website yesterday.「私は昨日そのウェブサイトを偶然見つけました。」
この意味の表現だと”come across sb/sth”や”encounter sb/th”が代表的ですが、”stumble upon”を使うこともできます。どちらかというとイギリス人がよく使う表現です。前置詞は”on”や”across”でもOKです。
002
bump into sb:(人)にばったり会う 【bʌmp ˈɪntə】
I bumped into Matthew on my way home yesterday. 「昨日帰宅途中にマシューにばったり会った。」
001の表現は「人」と「物・事」の両方を前置詞(upon)の後ろに取ることができましたが、この表現はそれとは異なり「人」が前置詞(into)の後ろにきます。会話で頻繁に使われるフレーズです。
003
be up to speed with sth:(物・事)をよく知っている、(物・事)に精通している
Are you up to speed with Japanese culture?「あなたは日本文化に詳しいですか?」
この意味の英語フレーズだと”be familiar with sth”が有名で単語帳にもよく載っています。ただ、上記のものもネイティブはよく使うので覚えておいてください。
004
touch base with sb:(人)と連絡を取る 【tʌtʃ beɪs wɪθ】
I’ll touch base with John tomorrow. 「明日ジョンに連絡してみます。」
ややインフォーマルな表現ですが、ビジネスでもよく使われます。メールにもよく出てくる表現です。
005
(be) over the moon:大喜びの、有頂天の 【BrE: ˈəʊvə(r) ðə muːn】【NAmE: ˈəʊvər ðə muːn】
The married couple were over the moon. 「その夫婦は大喜びだった。」
「月を飛び越えちゃうくらい嬉しい」が元々の意味です。どちらかというとイギリスでよく使われる表現です。
006
gab with sb:(人)とおしゃべりする 【ɡæb wɪð】
It was great gabbing with you.「お話しできて楽しかったです。」
カジュアルな会話で主に用いられます。with sbがないこともあります。例えば、”They have been gabbing on the phone for nearly three hours.”「彼らは電話で3時間近く話しています。」
007
mind one’s p’s and q’s:言動に注意する 【maɪnd wʌnz piːz kjuːz】
Mind your p’s and q’s.「言動に注意しなさい。」
ほぼ例文どおりに使用されます。”P’s and Q’s”、”Ps and Qs”と若干異なった表記になる場合もあります(発音は同じです)。”p”と”q”の由来は諸説あります。例えば、”P”は”please”、”Q”は”thank you”の”k you”で、その2つをしっかりと心がけておきなさいというもの。他には、「”p”と”q”はスペルが似ているから気をつけましょう」から来ているとする説もあります。
008
be backwards about coming forwards:ためらう、躊躇する 【BrE: ˈbækwədz ~ ˈfɔːwədz】【NAmE: ˈbækwərdz ~ ˈfɔːwərdz】
Don’t be backwards about coming forwards. 「ためらう必要はありませんよ。」
直訳すると「前に出ることについてしり込みする」の意味になります。ほぼ例文通りに使用されます。否定文(”not backwards about coming forwards”)になると、「自信とやる気に満ち溢れている」の意味になります。イギリスでよく用いられる表現です。
009
flick through sth:(物・事)にざっと目を通す、(物・事)をパラパラめくる 【flɪk θruː】
John was flicking through your report.「ジョンが君のレポートをパラパラと読んでたよ。」
本・雑誌・websiteの内容を全部は読まずにささっと目を通している感じです。もしかしたら、スマホのフリック入力機能をご存知の方は、”flick”という単語から、この「ささっ」「パパっ」という素早いアクションのニュアンスが直感的に分かるかもしれません。
010
better late than never:来ないよりは遅れてきた方がよりよい(マシである)
I’m sorry it’s late, but better late than never!「遅れちゃってごめん。でも来ないよりはいいよね。」
「何も起きないよりは遅れてでも起きた方がマシ」の意味で使われることもあります。
011
cut corners:手を抜く 【BrE: kʌt ˈkɔːnə(r)z】【NAmE: kʌt ˈkɔːnərz】
They cut corners on the final process of the work.「彼らは仕事の最終工程に手を抜いてしまった。」
「最短距離を進むべくいくつかの大事な事項(=コーナー、かど)を省く」のようなニュアンスです。多くの場合、否定的な意味・良くない意味で使われます。
012
lose one’s shirt:(ギャンブルや投資で)無一文になる 【BrE: luːz wʌnz ʃɜːt】【NAmE: luːz wʌnz ʃɜːrt】
I lost my shirt investing in the stock market.「株に投資したらすってんてんになっちゃったよ。」
「シャツ=最後に残った財産」さえも失ってしまう、のようなニュアンスの表現です。
013
Bob’s your uncle:簡単でしょ、万事OKだよ、大丈夫だよ 【BrE: bɒbz jɔː(r) ˈʌŋkl】【NAmE: bɑːbz jʊr ˈʌŋkl】
To make instant noodles, just add hot water and Bob’s your uncle.「インスタントラーメンを作るんだったらお湯入れるだけだよ。簡単でしょ!」
変わった表現ですね。直訳したら「ボブはあなたのおじさん」です。なんでこのような意味になったのか、由来は諸説ありますが、いずれにせよかなり謎に包まれています。イギリス英語です。
014
bits and bobs:こまごまとしたもの 【BrE: bɪts ən bɒbz】【NAmE: bɪts ən bɑːbz】
I’m heading out for some bits and bobs.「ちょっとこまごまとしたものを買いに出かけます。」
イギリスでよく使われます。アメリカ英語だと“bits and pieces”になります。
015
tickle one’s fancy:(人)の興味をそそる 【ˈtɪkl wʌnz ˈfænsi】
Does that tickle your fancy?「それっておもしろいと思う?」
“tickle”は「くすぐる」、”fancy”は「好み」です。これらが合わさって「好みをくすぐる」となります。
ちなみに“fancy”が動詞になると「〜が欲しい、好きだ」の意味になります。イギリス人はこの表現をかなりよく使います。 「〜が欲しい、〜したい」と言いたい場合、一般的には”want”がよく使われますね。
- want sth
- want to do
でもイギリス人は以下のように言うのが好きです。
- fancy sth
- fancy doing
2. #016-30

016
face the music:自分の言動の報いを受ける 【feɪs ðə ˈmjuːzɪk】
Because he stole money, he now has to go to court and face the music.「彼はお金を盗んだために、裁判所に行って報いを受けなければならない。」
このフレーズの由来も諸説あります。いろいろ調べたのですが、こちらのブログ記事が分かりやすかったので、気になる方はご覧ください。
017
(be) spot on:(形)完全に正しい 【BrE: spɒt ɒn】【NAmE: spɑːt ɑːn】
Her English was spot on.「彼女の英語は完全に正しかったよ。」
イギリスでよく使われる表現です。形容詞ですが名詞を修飾できない点に注意です(つまり”spot on English”とは言えないということです)。
018
light at the end of the tunnel:困難の先に見えてくる光・希望 【~ ˈtʌnl】
There is always light at the end of the tunnel.「長く苦しい道のりの先には必ず希望の光がある。」
トンネルの終わりに見える光を「長く困難な道のりの先にある希望」にたとえた表現です。
019
game changer:大変革をもたらす人・もの 【ɡeɪm ˈtʃeɪndʒə(r)】
The research they did was a game changer. 「彼らが行ったリサーチは革命的だったよ。」
それまでのゲーム(のルール)をひっくり返すくらいすごい変化をもたらした人や物事に対して使われます。
020
have second thoughts:考え直す、ためらう 【~ θɔːts】
Did you have second thoughts then?「あのとき君はためらわなかったの?」
「2回考えてしまう」からこのような意味になります。”thought”と単数形になることもあります。関連表現として、“without a second thought”で「ためらわずに」です。
021
reach out to sb/sth:(人や物・事)に手を差し出す、(人や物・事)に働きかける
We should reach out to one another.「僕たちはお互いに手を差し伸べあっていかないとね。」
いろいろな使い方ができるフレーズです。ビジネスシーンでは「新しい顧客に働きかける」のような感じでも使われます。
また、「〜の件で(〜するために)メールいたします」と言いたい時にも使えます。
- I am reaching out to you regarding the project…(*”regarding”はここでは「〜について」の意味です)
- I am reaching out to you to inform…(*この”to inform”は「to 不定詞」です)
“email”の動詞も同じ意味になります(ただしこの場合、前置詞の”to”は不要です)。
- I am emailing you regarding the project…
- I am emailing you to inform…
022
not one’s cup of tea:<主語は>(人)の好みではない
This movie is not my cup of tea.「僕この映画好きじゃないんだよね。」
イギリス英語です。19世紀のイギリスで、”~ is my cup of tea”と言われていたのが起源とされます。今は否定文で使われることがほとんどです。
023
slip one’s mind:<主語を>うっかり忘れる
Today’s meeting completely slipped my mind.「今日の会議すっかり忘れちゃってたよ。」
「忘れる」という表現だと”forget”が一般的ですが、”slip”(滑る)を使った上のような表現もあります。忘れる対象が主語になるのがポイントです。なお、例文を”forget”を使って表現すると、”I completely forgot today’s meeting.”になります。
024
jumpy:【形】びくびくする、神経過敏な
Why are you so jumpy?「なんでそんなにびくびくしてるの?」
「ジャンプ」(jump)の派生語です。良くないことが起きるのではと心配したり驚いたりして心が飛び跳ねるイメージです。
025
hands-on:【形】細かく指示を出す、人任せにしない
Sarah is a hands-on manager.「サラはちゃんと現場に出てきて部下と一緒に仕事をするマネジャーだよ。」
「手を乗せている」=「人任せにしない、ちゃんと面倒を見る」のようなニュアンスです。
ビジネス以外の場面だと、このフレーズは「人に任せず自身で子供をケアする親のこと」を表すためにもよく使われます。
hands-on parent: 子供のことをいつも気にかけている親
The couple are really hands-on parents.「あの2人って本当に子供の面倒見がいい親だよね。」
026
have butterflies in one’s stomach:ドキドキする、不安になる 【BrE: ~ ˈbʌtəflaɪz ~ ˈstʌmək】【NAmE: ~ ˈbʌtərflaɪ ~ ˈstʌmək】
I had butterflies in my stomach before the interview.「面接の前は不安で仕方なかったよ。」
直訳は「胃の中に蝶々がいる」ですが、転じて「お腹の辺りがそわそわして落ち着かない」の意味になります。
実は”butterflies”自体に「不安にさせるもの、ドキドキさせるもの」という意味があります。ですから、少し応用して、以下のように言うこともできます。
The incident gave me butterflies.「その出来事は私を緊張させた。」(←その出来事は私に不安にさせるものを与えた)
反対にこのフレーズをポジティブな意味で使うこともできます。恋愛関係で出てくる表現です。
You give me butterflies. 「君を目の前にするとドキドキしちゃうんだ。」
マイケル・ジャクソンのButterfliesという曲の歌詞にも出てくる表現です。
027
go the extra mile:もうひと頑張りする、一層努力をする
I will go the extra mile to pass the exam.「試験に受かるためにもうひと頑張りするよ。」
“extra mile”は直訳すると「追加の1マイル(1.6km)」です。もう少し先へ進もうというニュアンスが伝わりますね。
028
sugar-coated:(真実を隠して)見かけをよくした
He made a sugar-coated promise.「彼はうわべばかりの約束をした。」
「砂糖でコーティングされた」から転じて、「(人を欺くように)見かけ上は魅力的に見えるが本当はそうではない」の意味になります。
029
a drop in the ocean:大海の一滴
Our budget is a drop in the ocean.「我々の予算は大海の一滴(くらい少ない)。」
「取るに足らないこと」をたとえたイギリス英語です。五木寛之さんの作品に『大河の一滴』がありますが、こちらも類似した意味ですね。アメリカ英語では、“a drop in the bucket”と言います。
030
bend over backwards (to do):(〜するために)全力を尽くす
We bent over backwards to support your research.「我々はあなたの研究を支援するために全力を尽くしてきた。」
“backwards”の後ろは「for sb(人のために)」でもOKです。
まとめ
語彙やフレーズは実際に使うことで徐々に身についていきます。
使いやすいと思うものからでよいので、話すときに取り入れてみてください。
ドラマや映画を観ているときに出てきたら「きた!」と思ってくださいね(笑)。
ブログ主のプロフィール:
大学で英語とイギリス文化を教えています。イギリスに5年間留学して博士になりました。本ブログでは、主に英語学習とイギリスの歴史や文化について記事を書いています。
Twitter: https://twitter.com/camp_hakase