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英会話力の基礎(文法・発音)をきたえる参考書【成果を上げる2冊】

投稿日:2020年9月5日 更新日:

大学生や社会人の方と話をしていると、英会話を一生懸命勉強してはいるのだけど伸び悩んでいる人にしばしば出会います。


話を続けながら伸び悩みの原因を私なりに分析してみます。すると、多くの場合、以下の2つのうちのどちらか、あるいは両方に問題があることに気づかされます。それは、

  • 文法
  • 発音

です。

英会話の参考書の多くは、日常会話でよく使われるフレーズを手際よくまとめています。これはこれでとっても有益な情報です。

しかしフレーズを覚える前に(あるいはそれと合わせて)しておいた方がよいことがあるのです。それが、文法と発音の習得です。

よくこんな問題が起きますね。

  • 「フレーズをたくさん覚えたはいいけど、いざとなるとなかなか自分の言葉で話せない」
  • 「覚えたフレーズを使ってみたのだけれど伝わらなかった」

一つ目の問題が起きる一因は、文法をきちんとマスターできておらず、言いたいことを正しい英文で表現できないことにあるのかもしれません。

二つ目の問題は、もしかしたら発音がよくなかったことが原因で起きたのかもしれません。

本記事では、英会話力の基礎である英文法と発音をマスターするために有益な参考書を紹介していきます。

とはいえ、両分野にかんする参考書は世の中に数多く存在します。どれを手にとればよいのかわからないという方も多いはずです。

ですから、本記事では「これをやっておけば大丈夫」という参考書を両分野から1冊ずつ紹介していくことにします。(少し大胆ですが、思い切ってみます。学生や友人から、英文法あるいは発音についてよい参考書がないか尋ねられたら個人的にはこれをすすめていくというものを取り上げます。)

✔︎ 本記事のテーマ:

英会話力の基礎をかためるために最適な参考書を、文法と発音の分野からそれぞれ1冊ずつ紹介する

なお、英語学習に割くことができる時間は人それぞれでしょうから、学習を進める際は以下のイメージで行うとよいと思います。要は優先順位の問題です。

  • 時間に余裕がある人:文法と発音を同時に学習する
  • 時間があまりない人:文法をまずかためて、そのあと発音を集中的にやる

文法と発音という土台ができてきたら、その後その上に語彙やフレーズの知識をのっけていくという感じで学習を進めていくのがよいです。


✔︎ 本記事のフローチャート:

  1. 英文法をマスターするための1冊
  2. 発音をマスターするための1冊

それでは順番にみていきましょう。

1. 英文法をマスターするための1冊


まず、英文法については以下の参考書をオススメいたします。

大西泰斗/ポール・マクベイ『一億人の英文法』(東進ブックス、2011年)

英文法の分野の参考書では最も売れている1冊です。


本書の最大の特徴は、タイトルの副題によくあらわれています。それは「すべての日本人に贈る『話すため』の英文法」というものです。

英文法と聞くと、特に高校受験・大学受験を経験したことがある方の多くは、「四択問題・空所補充問題・並べ替え問題を解くために必要なアレでしょ」と考えてしまうかもしれません。

しかし、こうした問題を解けるようになることが英文法を学習することの本質ではありません。

英文法は、話す・聞く・読む・書く4つの技能すべての基礎力をつくるのに必要不可欠なものなのです。

そのなかでも、本書は日本人がもっとも苦手とする「話す」力を伸ばすことに力点がおかれています

大西泰斗さんは、英語教育の世界ではすっごく有名な人で、関連著作は多数におよびます。NHK(Eテレ)の英語番組にも長年出演していらっしゃいます。

(ちなみに、私にとってもっとも思い出深い大西さんの著作は『ネイティブスピーカーの前置詞』です。理屈だけじゃなくてイメージで直感的に”on”とか”at”などの前置詞を理解させようとする手法には脱帽、目からウロコが落ちまくりでした。)

本書の長所は数多く指摘できますが、あえて絞り込むと以下の2点です

  1. 人々の直感に訴える
  2. 不要な文法用語は使わない

1. 前述した『ネイティブスピーカーの前置詞』同様、本書には、英文法を読者に直感的に理解してもらうための工夫が随所に見られます。その一例が、イラストが多く用いられていることです。イラストを用いてイメージに訴えかけながら文法事項を説明することで、ネイティブが文法を理解するのと同じような感覚を読者に経験してもらおうと試みています。


2. もちろん英文法の参考書ですから、文法用語は多く使われています。しかし、不要な用語・わかりにくい用語は使わず、どうしても必要な場合は別の仕方で説明するという方針が貫かれています。これによって、「文法用語難民」の発生を抑制しているわけです。

英文法の重要事項はすべて本書1冊の中に書かれてあります。

最初から順番に読んでいき、理解が足りないと思う箇所がでてくれば繰り返すという作業を行なっていけば、英文法をしっかりとマスターすることができます。ベースとなるある程度の英語力があれば(例えば中学英語です)、それほど困難を感じることなく読み進められるはずです。

本書は全部で約650ページのボリュームがあります。「多い!」と思うかも知れませんが、意外とサクサク読むことができます。それに、この一冊をマスターすれば英文法についてはひとまず卒業なわけですから、考え方次第ではかなり「少ない分量」と考えることもできます。

(英文法の「簡単さ」や、覚える事項の有限性については、「英文法の学習は簡単である、と言い切れる理由」というタイトルの別記事で説明しています。ご興味があればそちらの記事もご覧ください。)


1日30ページなどペース配分を決めて、なるべく早く学習を終えてしまいましょう。

本書冒頭でも「高校生なら1週間から10日」で読みとおしてみよう、「英語を話したいなら、文法はなるべく短期間に終わらせる必要がある」と書かれてあります。

2. 発音をマスターするための1冊

発音についてもたくさんの参考書が世に出ています。

個人的に思い入れのある参考書もいくつかあって、例えば、竹内真生子さんの『日本人のための英語発音完全教本』(アスク、2012年)にはとても助けられました。


ただし本記事で取り上げたいのは別の参考書です。

それは、米山明日香『英語リスニングの鬼100則』(明日香出版社、2020年)です。

【Kindle版はこちら↓↓↓】


音声DL付き 英語リスニングの鬼100則

タイトルを見て、「え、リスニングの参考書なんじゃないの?」と思われるかもしれません。確かに本書はリスニングの参考書で「も」あるのですが、目次をみたら印象が一変します。

目次は以下の通りです。

(目次の内容をすべて詳細に書くと非常に長くなってしまうので、章のタイトルだけを抜き出して部分的に少しだけ補足コメントをつけてみました。目次の詳細を知りたい方は、明日香出版社さんのHP内にあるこちらのページをご覧ください)。

  • 第1章 だから英語が聞き取れない
  • 第2章 日本語にない音、注意すべき音:母音編(*日本語の「あ」「い」「う」が英語では様々に発音されることや、二重母音について解説)
  • 第3章 日本語にない音、注意すべき音:子音編(*破裂音・摩擦音・鼻音などについて解説)
  • 第4章 音は変化する(*発音しているときに脱落する音などについて解説)
  • 第5章 音はつながる、だから難しい(*語と語が連結した際に変わる音などについて解説)
  • 第6章 発音は場所によって変化する
  • 第7章 イントネーションと文強勢(*英語のリズムを形作っているイントネーションの上がり下がりについて解説)
  • 第8章 世界の英語(*世界で話される多様なアクセントについて解説)

目次だけみたら、リスニングの参考書というよりは発音の参考書かなと思う方もいらっしゃるでしょうね。


普通のリスニングの参考書は、設定された特定の場面での会話やモノローグを聞いて勉強するというスタイルをとることが多いですが、本書はそうではありません。

本書は、もっと根本にさかのぼって、発音ができなければリスニングはできるようにはならない、あるいは、リスニング力と発音する力は表裏一体であるという発想から書かれています。

そのことをよく表しているのが、本書の大きな特徴といえる「フィードバック・メカニズム」という考え方です。該当する箇所を引用してみます。

「人間は話をするときに、音のボリューム調整をしたり、自分の出した音が正確だったか振り返ったりと、「音の調整」を行いながら話します。つまり、一瞬のうちに発した音を聞き、フィードバックしているわけです。発した音が間違っていたり、場違いに大きな声を出したりした場合、これを修正することができます。こうしたループのことを聴覚的な「フィードバック機構」(feedback mechanism)と言います。」(本書、p. 34)

つまり「自分の発音をきちんと聞き分け、それを正しく調整していくことを繰り返すなかで、リスニング力は上がっていくのだ」という考えですね。

私はこの点に、他の発音の参考書(リスニングの参考書)とは異なる本書の特徴を見出しますし、また、私自身この発音とリスニングを結びつけたトレーニング方法が非常に理に適ったものであると考えています

本書の第2章から第7章は全部で83のセクションに分かれています。各セクションは以下のような構成です。

  • 発音の解説
  • リスニングの練習
  • 発音の練習

ここからも本書がリスニングの参考書でありながら発音の参考書でもあることがよく分かると思います。しかしそれに加えて、読者に対して、発音を鍛えながらリスニング力を鍛えていくことを可能にする道筋をしっかりと示そう、そして、そのためのトレーニングメニューを充実させようというはっきりとした意志を感じさせます。

なお、著者の米山明日香さんは、青山学院大学(社会情報学部)で教鞭をとっていらっしゃる、英語音声学・発音指導のエキスパートです。

本書をもちいて、発音とリスニング力を同時に鍛え、実用的かつ効率的に英語学習を進めてみてはいかがでしょうか。


【+a】

ただしもしも「イギリス英語に特化して勉強したい」ということがはっきりしているのであれば、オススメする参考書は変わってきます。

その場合は以下を頼りにしてみてください。イギリス英語指導者の第一人者である小川直樹先生の渾身の一冊です。

小川直樹『イギリス英語発音教本』(研究社、2017年)

まとめ

本記事の内容を整理すると以下のとおりとなります。

  • 英会話力の土台として、①英文法と②発音の習得がとても大事。
  • 英文法の学習には、大西泰斗/ポール・マクベイ『一億人の英文法』がオススメ。
  • 発音(とリスニング)の学習には、米山明日香『英語リスニングの鬼100則』がオススメ。

異なる言語で言いたいことを言えるようになる(express yourself)のは楽しいことです。

本記事でオススメした2冊が助けとなり、皆さんの英会話力が向上するといいなと思っております。


Studying the basics is vital.

ブログ主のプロフィール:

大学で英語とイギリス文化を教えています。イギリスに5年間留学していました。英検1級。本ブログでは主に英語学習とイギリス文化について記事を書いています。

Twitter: camp_hakase

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執筆者:


  1. […] ん、文法・語法については、先日本ブログでも取り上げた『一億人の英文法』などの別のテキストを用いてマスターしていった方がよいでしょう。(是非こちらの記事もご覧ください。) […]

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